現在、新型コロナウィルスの影響を受け、さまざまな国、競技団体から五輪延期の声が挙がっています。
そんな中聖火は宮城へ届き、被災地への展示を経て予定通り聖火リレーが行われようとしています。そしてボクシングの代表も決まりました。
東京五輪はどうなってしまうのか、その行く末とボクシングについてみてみましょう。
五輪延期!?ノルウェーが要請
新型コロナウィルスは現在ヨーロッパを中心に広がりを見せています。
日本でも日々感染者が確認され、終息へ向かっているとは言い難い状況でしょう。
終息が見えないと、東京オリンピックはどうなるのかという懸念が生まれます。そして1年延期をという声が挙がっているのも事実です。
そんな中今回東京オリンピック開催延期要請をIOCに出したのはノルウェーです。
ノルウェーというと冬の競技に強いというイメージがありませんか?
ノルウェーは新型コロナウィルスが終息するまでの開催延期を要請、さらにイギリス陸連のカワード会長も東京五輪延期を主張しているとのこと。
そんなところに声を挙げたのが世界陸連のセバスチャン・コー会長です。セバスチャン・コー会長によると、2021年8月には世界陸上選手権があり、オリンピックが1年延期されると日程を変更しなければならないとのこと。最近ではコパ・アメリカの延期も発表されたところですが、こうした様々なスポーツイベント、大会が延期や中止になっているのは事実です。
セバスチャン・コー会長は東京オリンピックを9月10月のように秋に延期する案も出しています。
一方アメリカ側はというと、トランプ大統領の発言ばかりに目が言ってしまいがちですが、今回アメリカ水連が延期を要求しました。延期期間は1年とのことです。
アメリカは水泳王国の一つですが、現在アメリカ国内では多くの新型コロナウィルス患者が出ています。
IOCにゆだねる…パラ五輪の意向
ところで日本側の対応はどうなのでしょうか。首相官邸側は毎日のように報道が流れていますが、東京オリンピックの次に開催されるパラリンピックについては、IOCの判断にゆだねるという報道がありました。
国際パラリンピック委員会は公式サイトでは一つのスポーツイベントとしてペアを組んでいるものの、開催都市契約の署名者ではないということなんですね。
また東京オリンピック・パラリンピックの開催都市契約は東京都と日本オリンピック委員会、そしてIOCの3者からなるため、国際パラリンピック委員会は判断をIOCにゆだねることになったというのです。
JFAは開催に前向き
そんな中予定通りの開催をと提言したのがJFAの田嶋会長です。
田嶋会長というと、オランダで行われていた会議で新型コロナウィルスに感染したとされている人物ですね。
JFA公式ホームページで近況を報告した田嶋会長は、現在微熱があり、肺炎の症状も少しあることを明かし、その後医師の治療によって熱も下がったことを報告。すぐに結果は出ないけれども、こうした積み重ねによって新型コロナウィルス感染症の治療法開発に活かされればと語っています。
そのおうえで東京オリンピックについて、インファンティーノ会長からの見舞いの電話に対し、日本サッカー協会、FIFAカウンシルの立場から、変更を決めることはできず、予定通りの開催をしたいと告げたのです。
ここにはオリンピックのサッカー代表が23歳以下であること、技術的に難しいことが理由として挙げられています。
年内延期案も
1年後の延期を…と様々な国、団体から叫ばれている東京オリンピックですが、競技によって事情が違うのは当然のことです。
そんな中浮上したのは年内延期案です。
聖火が宮城に到着した3月20日、複数の組織委員関係者が年内延期が現実的と明かしたと言います。
さらに国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長自身アメリカのメディアに延期を視野に入れた発言をし、違うシナリオを検討しているとしました。
決定は遅くとも4月とされていますが、年内延期とはどういうことでしょうか。
それは秋開催です。
秋開催は世界陸連の会長であるセバスチャン・コー会長も提言しており、7月24日以外でという見方が強まっているようです。
たとえば1~2年延期された場合、選手にとってのリスクが大きくなります。
オリンピックに照準を合わせてきた選手たちですから、コンディションが崩れる可能性があります。また世界水泳や世界陸上も重なるため、日程調整が難しいんですね。
数か月であればリスクは最小限にとどめることができ、また金銭面についても危機管理の方策と保険によって事業継続が可能ということ。
しかし開催延期を決めるには時期尚早としており、新型コロナウィルスが今後どのようになって行くかにより、世界的情勢により決まると言えるでしょう。
ボクシング代表が決定…混沌の中
こうした中、東京オリンピックボクシングの日本代表が決定しました。
今回選出されたのは開催国枠で、ライト級の成松大介選手、ミドル級の森脇唯人選手、フライ級の田中亮明選手です。
田中亮明選手、実はプロボクシングでは3階級制覇を成し遂げている田中恒成選手の実兄。2016年リオオリンピックでは世界最終予選で敗退していますから、今回の選出については弟に負けないくらいの好戦をしたいと約束してくれました。
こうして決まった東京オリンピックボクシング日本代表ですが、日本ボクシング連盟の内田貞信会長は世界最終予選なども中止されており、すべての予選を行うことをお前提と考えれば、オリンピックは1年延期がベストという意向を示しました。
確かに今月中旬にロンドンで行われる予定だった欧州大会、今回日本代表を逃した選手が出る予定となっていたパリでの世界最終予選も中止となっています。
選手がベストのコンディションで試合に臨むためには1年後くらいがベストということなんですね。
ボクシングは予選が行えない場合、世界ランキングなどを参考に選手を選考するという基準があります。ところが選手の引退、階級替えなどにより、最新の世界ランキングが2018年のものだというのです。そのため国際オリンピック委員会が示す選考基準に基づく方法はありえないということです。
ライト級の成松大介とは
今回ライト級で日本代表に選ばれた成松大介選手、現在はライトウェルター級なのですが、リオデジャネイロオリンピックではライト級で出場しました。2018年のアジア大会では銅メダルを獲得しています。
現在は自衛隊体育学校に所属し、1等陸尉の階級を持つ成松大介選手、隈本農業高校入学後にボクシングを始め、2018年までに全日本選手権においてバンダム級、ライト級、ライトウェルター級の3階級制覇を成し遂げ、さらに通算優勝回数は8回、2010年から2015年に至るまで6連覇を果たしたすごい選手なんです。
2013年と2015年の世界選手権ではベスト16入りしており、リオデジャネイロオリンピックでは惜しくも2回戦でアメリカの選手に判定負けしています。
2019年には日本ボクシング連盟より2018年度アマチュア部門最優秀選手に選出、4月に行われたアジア選手権では64kg級2回戦、9月の世界選手権でベスト16進出を果たしました。
成松大介選手出身の熊本といえば大きな震災に見舞われた地域です。地震発生時、熊本にいたという成松大介選手、家族からは早く帰京したほうがいいと言いましたが、成松大介選手はここで帰ってしまうとなぜ帰ってきたのか、男として、人間としてどうかと思うと10日ほど熊本にとどまり、車中泊や祖父に寄り添うなどといったことをしました。そしてこの時すでに自衛隊体育学校に所属していましたが、災害派遣の自衛官を見て何もできない自分にもどかしさを感じ、オリンピックで活躍することが地元に元気を与えることになると決意したそうです。
ミドル級の森脇唯人とは
森脇唯人選手の所属するミドル級、実はロンドンオリンピックで村田諒太選手が金メダルを取った階級です。
その村田諒太選手の再来と言われる森脇唯人選手、最も熾烈な争いが繰り広げられる階級と言われるミドル級なんですが、長身に恵まれたリーチが持ち味と言います。
スピードも持ち合わせた森脇唯人選手、試合で活かしたいと語っています。
以前は試合前日までハードな運動、アップをしていたという森脇唯人選手、最近は1~2日前より体のケアを行うことで、スピードを活かす試合ができるようになったとのこと。
そんな森脇唯人選手にはアジア競技会のプレ大会で優勝しながら本番では1回戦負けしてしまった苦い思い出が。
同じ失敗を繰り返さないためにも、日本とは違う海外の試合を経験するなど、とにかく経験値を積み、自分のパフォーマンスを繰り広げることに集中するようになったと言います。
村田諒太選手をリスペクトする森脇唯人選手、東京オリンピックでも活躍してくれることでしょう。
フライ級の田中亮明
さて、フライ級代表となった田中亮明選手ですが、弟の田中恒成選手の方が知られているかもしれません。
しかしこの田中亮明選手、あの井上尚弥選手とも対戦したことがあり、しかも唯一まともに試合ができた選手として知られています。
戦ったのは高校時代で通算4回とのことですが、井上尚弥選手との対戦経験が田中亮明選手の糧となっていることは間違いないでしょう。
幼少期は空手にいそしんでおり、小学生のころからボクシングを始め才能が開花したという田中亮明選手、現在は中京学院大学附属中京高等学校の先生を務めています。
国内の試合はもちろん、プレオリンピック大会でも優勝するなど、活躍が期待されている選手です。
そんな田中亮明選手の持ち味は左ストレート。実はアマチュアのボクシンググローブは相手にダメージが入りづらい構造なのですが、田中亮明選手から繰り出される左ストレートは相手をKOしてしまうほどなんですね。
今回弟の田中恒成選手からも檄を飛ばされたという田中亮明選手、悔いなく戦ってくれることを祈るばかりと田中恒成選手は言います。
どちらにしろメダルへの期待がかかる田中亮明選手、オリンピック開催時期がどうなるかはわかりませんが、活躍を期待したいですね。