若干13歳で日本の飛込競技の第一人者になろうとしている少年をご存じでしょうか?
それが玉井陸斗です。2020年2月時点で13歳の中学1年生。なんと全日本を制したのはわずか12歳のときでした。腹筋はまさにシックスパック、バランスの取れた体とぶれない軸、そして早い回転が武器の玉井陸斗、いったいどんな選手なんでしょうか。
そのほかの注目選手もみてみましょう。
玉井陸斗とは?
2月7日、飛び込みのW杯代表選考会の第3日目、男子高飛び込み準決勝において注目の玉井陸斗が2位で決勝進出を決めました。この競技会は東京五輪最終予選を兼ねており、決勝で上位に入るということは東京五輪出場に大きく近づくということになります。
準決勝は6本飛び込み、その合計得点で上位者が決勝に進出することができます。
普段の玉井陸斗なら1位通過も可能ですが、2本目に採用した後ろ宙返り3回半抱え型で回りすぎて失敗、入水も乱れてしまい、結果は2位。
それでも玉井陸斗は決勝に向けて修正をしたいと前向きなコメントを残しました。
東京オリンピックに出る為には上位2位までに入り、W杯に出場、さらに準決勝で18位以内に入らなければなりません。
玉井陸斗は年齢制限があり、昨年の世界選手権およびアジア杯に出場することはできませんでしたから、これがまさにラストチャンスなんですね。
小学校1年生の時に参加した飛び込み教室をきっかけに飛び込みの世界に入った玉井陸斗、2019年日本室内選手権において、史上最年少の12歳で優勝し、一気に注目されるようになりました。
現在持っているスコアも世界水準では4位。メダル獲得に期待がかかります。
そんな玉井陸斗、2019年12月に行われた公開練習で切れのある入水を披露。インタビューでは史上最年少出場を目指しているわけではなく、オリンピックでメダル争いをしたいのだと抱負を語りました。
デュエットにも期待!
飛び込みで期待なのは何も玉井陸斗だけではありません。男子デュエットにも期待がかかっています。
飛び込みのデュエットは2人の息がそろっているかなど細かいところまで見られる競技です。技の難易度ももちろん必要なので、レベルの高い選手が必要とされているのは間違いないでしょう。
その中で注目されているのは東京オリンピック内定第1号となった寺内健・坂井丞ペアです。寺内健はシングルスでも注目されているのでご存じの方も多いでしょう。
1周りも年齢の違うペアですが、なんと合わせて練習する機会はほとんどないのだとか。
寺内健・坂井丞ペアが日本代表を勝ち取ったのは世界選手権のこと。決勝で7位になり、全境地を通じてのオリンピック代表内定第1号となったのです。ちなみに寺内健は6度目の代表。夏季最多記録タイを更新しました。
寺内健は1980年8月7日生まれ、なんと2020年で40歳になるベテランなんです。
ご両親ともにオリンピック選手だったということもあり、生後7か月から水泳を始めた寺内健、最初は競泳選手になりたかったそうですが、思うようにタイムが出ず、プールサイドの飛び込み台で遊んでいたところ、コーチである馬淵氏からスカウトを受けたと言います。
中学2年生の時に史上最年少で日本選手権優勝、玉井陸斗に抜かれるまで史上最年少記録を保持していました。
2009年に現役を退いたものの、2012年に復帰、ロンドンオリンピックを目指すことを誓いました。
坂井丞は1992年8月22日生まれ、なんと2人の年齢差は12歳もあるんですね。干支は一緒ですが。
高校総体で板飛び込み及び高飛び込みの2冠を3連覇し、2009年からは世界選手権に6年連続で代表、2014年のアジア大会で銅メダルを獲得しました。
まさに飛び込みの申し子ともいえる寺内健・坂井丞ペアですが、2018年のアジア大会では銅メダルを獲得しています。
ペア出場となるシンクロ飛び込みで重要視されるのはシンクロ率、スピード、ポーズ、回転のタイミング、着水時の音など、本当に複雑です。
女子・金戸凛は絶望的
さて、女子はどうでしょうか。
女子では3世代でオリンピック出場を目指していた金戸凛が登場。しかし4位に終わり、東京ロインピック出場は絶望的になりました。
特に3本目の後踏みきり前宙返り2回転半エビ潟の入水に乱れが生じ、得点が思うように伸びませんでした。右肩に痛みを抱えており、負担を減らす方法もとられましたが、敵わなかったのです。
一方で兄弟の金戸快は決勝進出を決めており、3世代そろってのオリンピック出場は彼にかかることとなりました。
女子で安定した演技を見せたのは東京オリンピック内定をもらっている三上紗也加です。
5つの市議においてすべて60点越えを見せたものの、オリンピックに向けてレベルアップをしたいと抱負を語りました。
ちなみに金戸兄弟の祖父母は1960年のローマ大会、1964年の東京大会に出場、父母は1988年のソウル大会、1992年のバルセロナ大会、1996年のアトランタ大会に出場しています。
瀬戸大也を支える元飛び込み代表
ちなみに現在日本競泳のエースともいえる瀬戸大也の奥様として知られる馬淵優佳も元飛び込み日本代表です。
この馬淵優佳、お父様が寺内健のコーチである馬淵嵩英氏なので、親子そろって飛び込みをしているということなんですね。
3歳から水泳をはじめ6歳から飛込競技を始めたという馬淵優佳、2008年の日本選手権でシンクロ高跳び及び3メートル板飛び込みで2冠を達成します。
さらに2009年の東アジア大会で銅メダルを獲得し注目を集めたものの2011年の世界選手権は予選敗退、2012年にはインターハイで3連覇を達成しましたが、2017年に結婚、11月に引退しました。
瀬戸大也とは大学時代からのお付き合いということで、お互いをよく知る存在。支えあえる存在ということなんですね。
瀬戸大也自身も、頑張る姿を見せたい家族が増え、責任が増した分だけ強くなったと言います。
水泳競技はアーティスティックと合わせて3種目、水球などを入れるともう少し増えます。
どの競技も誰もが持てる力を発揮して頑張ってほしいですね。
そもそも飛び込みって?
飛込競技は弾力性のある飛び込み板から跳ね上がって水中に飛び込む飛び板飛び込み、飛び込み台から飛び込む高飛び込みからなる競技で、1人だけで行う競技と、2人1組のシンクロナイズドダイビングがあります。
飛び板飛び込みは1メートルまたは3メートルから、高飛び込みは5メートル、7.5メートル、10メートルから飛び込みます。そのため入水時の威力は高さが増すほど上がり、ケガも伴う危険な競技と言われており、初心者がいきなり10メートルなどの高さから技を試そうとするのは棄権です。
しかし勝負が決まるまでの時間が非常に短く、飛び出しから入水までの時間はわずか2秒、その間に回転やひねりを入れ、さらにノースプラッシュという水しぶきを抑えた入水を行う必要があります。玉井陸斗が得意とするのがこのノースプラッシュなのですが、これは入水時の姿勢が伸びているかどうかというところにかかっているようです。
オリンピックに取り入れられ始めたのは1904年のセントルイスオリンピックのこと。アメリカ代表のグレッグ・ローガニスが1984年ロサンゼルスオリンピックおよび1988年ソウルオリンピックにおいて高飛び込みおよび飛び板飛び込みで4つの金メダルを獲得しました。
金メダル所持数が多いのはアメリカですが、男女のシンクロでは中国が台頭しており、さらに育成環境が整っているということから、2008年北京オリンピックでは8種目中7種目を中国の金メダルで占めました。
高飛び込みはコンクリート製の飛び込み台から飛び込み、落下するまでの間に繰り広げられる回転、ひねり、ポーズなどにより特典が決まります。時速は自然落下でも50kmとなるため、踏切に失敗した場合はできるだけ衝撃を抑えることが必要とされています。
飛び板飛び込みは弾力性の高い飛び板から助走とハードルステップを用いて跳ね上がり、空中で体制を整えて入水します。
回転、ひねり、体を丸めるといったような演技により特典が決まり、技術力は高飛び込み以上のものが必要です。そのためベテラン選手は高飛び込みから飛び板飛び込みに移行する傾向にあるようです。
シンクロナイズドダイビングが初めて世界で取り入れられたのは1998年の世界選手権のこと、オリンピックには2000年のシドニーオリンピックから採用されました。使用されるのは飛び板飛び込みで、同調性により順位が決まり、演技40%、シンクロ性60%ともされています。種目は3メートルと10メートルの2種類です。
競技はともに自由選択飛びあるいは制限選択飛びとなっています。
自由選択飛びは技の何度に関わらず、演技内容を選手自身が決めることができます。
制限選択飛びは演技総数の何位立の合計数が決められており、超えてはいけません。そのためミスひとつが非常に大きな致命傷になりかねない競技です。
なお現在は自由選択飛びのみで行われることが多いです。
また演技には演技番号がつけられ、3~4桁の数字プラスアルファベットとなります。
技にも種類があり、第1軍の前飛び込みから第6軍までの逆立ち飛び込みまで難易度が変わります。基本姿勢もAの伸び型からDの自由型まであり、選手は幾通りもの技を披露し、競い合うのです。
演技番号はその内容によって決まります。
たとえば前途中宙返り1回半抱え型は113Cとあらわされ、演技群、途中宙返りがあるかないか、ある場合は1、ない場合は0とあらわされ、宙返り数を半回転ごとに1足します。そして飛び込み姿勢によるアルファベットがつけられるということです。
数字4桁になる場合はたとえば前宙返り1回半1回ひねり自由型の場合、演技群の数字2つ、さらに宙返り数とひねり数、そして飛び込み姿勢を採用するということですね。なおひねりがなければ数字は4桁になりません。
高難度の基準は男子3.4、女子3.0以上となっており、採点は審判長1名による演技の審判、5~7名の審判員が演技の祭典を行います。
審判員が7名の場合は最高点から上位2つ、下位から2つを除く残りの3つの祭典を合計、難易率をかけた数字が得点になります。
ただしこれは個人種目で、シンクロ種目は審判員が4~6名、同調性採点者が5名となります。
最近は自然環境つまり断崖絶壁からの飛込競技なども行われており、高さは20~27メートルにもなるのだとか、けが防止のため、入水は足から、ダイバー3名待機が決められています。それでも世界選手権、ワールドカップがあるというのですから、今後も飛び込みへの興味関心は高まっていくことでしょう。